引越しや不動産などさまざまな理由から、空き家を解体しようと考えている方もいるのではないでしょうか。
2006年以前に建てられた建物にはアスベストが含まれている可能性もあり、通常の解体工事に加えてアスベスト除去工事も必要となる点も把握しておかなければいけません。
しかし、アスベストとは何かそもそも知らない方もいるかと思います。
さらにアスベスト除去工事は、普段の生活で知る機会は非常に少なく分かりにくいところです。
そこで今回は解体工事を依頼する前に知っておくべき、アスベストの意味や危険性をはじめ、アスベスト除去工事や解体工事について解説します。
まずはアスベストとは何か、基本的な意味や用途などを解説します。人によってはアスベスト問題に関する報道で、聞いたことがあるのではないでしょうか。
アスベストは安価で性能も高い建築素材ですが、一方で非常に危険なため法律で原則製造禁止とされています。
アスベストとは鉱物繊維と呼ばれる素材で、石綿(いしわた)と呼ばれています。天然の素材で、青石綿と白石綿、茶石綿の3種類を国内で使用されていました。
アスベストは建築材料として、床や壁材をはじめ内壁や外壁などさまざまな部材に活用されています。
そのため、特定の用途というよりは、建物のあらゆる箇所に使用されているのが、アスベストの大きな特徴です。
また、アスベストの歴史は古く、国内では1930年代から輸入されていて、1970年から1990年代頃がアスベスト輸入量のピークです。
しかし、アスベストが人体へ与える影響が問題視されはじめ、1995年から使用禁止、2004年に法改正され製造禁止となりました。
2006年9月には、アスベストから代替できない製品を除いて、アスベスト含有量0.1%超えの製品製造禁止という法律も施行。
さらに2012年3月1日以降では、すべてのケースでアスベスト含有量0.1%を超える製品製造や使用など禁止です。
つまり、2019年現在アスベストの製造や使用は全面禁止ですので、2006年以降に建てられた住宅やビルなどすべての建物にはアスベストは使用されていません。
しかし法規制前に建てられた建物は、アスベストが含まれている可能性もあるためアスベスト除去工事の依頼も必要です。
これまでアスベストが使用されていた理由は、耐久性や耐摩耗性、耐熱性などさまざまな性能を持っているだけでなく、安価に確保できたためです。
コストと性能面、どちらの点を見ても優れていたため、日本でも多くの企業が積極的に住宅やビル建築、建築以外の製品にも使用されていました。
しかし、何十年も使用されたのち、アスベストには重大な問題が発覚します。人体への悪影響です。
アスベストが優れた性能を持っていた反面、人体へ悪影響与えることも発見されました。
アスベストは、非常に細かい糸のような形状で構成されています。
そして、人が呼吸した際に肺に吸い込まれてしまうほど小さく・軽い素材でもあったため、アスベストが空気中にある環境で呼吸すればするほど、肺に蓄積されます。
アスベストを吸い込んでしまった場合は、以下のような病気を発症してしまうので非常に危険です。
さらに、どの程度アスベストを吸い込むと発症するかについては、不明な部分も多いのが現状です。
アスベストは建物のあらゆる場所に含まれていて、常に空気中に舞っているケースや何らかの工事の際に大量飛散するケースがあります。
そして通常の解体工事を行う時もアスベストが大量飛散する可能性があるため、通常の工法では進めることが厳しい状況です。
アスベストが飛散した場合は、特殊なマスクや防護服が必要になるため個人レベルで100%防ぐことは難しいでしょう。
続いてはアスベストが含まれる箇所に関して、具体的に紹介します。
アスベストは耐久性や耐熱性など、さまざまな性能を持っているため建物のあらゆる部材に活用されていました。
そのため規制前に建てられた建物を解体する場合は、アスベストが含まれる箇所を調べます。
何度か触れていますがアスベストは、さまざまな性能を持った素材のため建物のあらゆる箇所に用いられていました。
たとえば以下の箇所は、アスベストを含有しているケースが多いのが特徴です。
どれも耐久性や耐熱性などが必要な箇所で、安価・優れた耐久性と耐熱性も持つアスベストを使用しやすい箇所ともいえるでしょう。
ただし、実際には建物の外壁・内装のみなど、一部に使用されているケースが多く、状況や建設時期によって異なります。
アスベストが含まれている建物は国内だけを見ても比較的多く、建設年によってアスベストの使用頻度や使用箇所が変わります。
たとえば1970年から1990年代初頭は、吹き付け材として多くのアスベストが使用されていた側面もあります。
一方で、アスベストの使用・製造が全面禁止へ法改正された2012年3月以降に建設された建物には使用されていません。
このようにアスベストが含まれている建物かどうかを確認する上で、建設年は重要な情報となります。
ここからは通常の解体工事に加えて行わる、アスベスト除去工事の内容や特徴について解説します。
アスベストが含まれた建物は、アスベスト除去工事でなければ適切に解体・処理できません。そのため依頼主側も、基礎的な内容は覚えておきましょう。
アスベスト除去工事とは、文字通りアスベストが付着された箇所に対して特殊な機械を使用して、アスベストを吸引・除去する工事の総称です。
アスベスト除去工事は、解体工事業者が担っている場合とアスベスト除去工事専門会社に分かれています。
また、アスベストの除去は、依頼後にすぐ作業開始となる訳ではなく、事前調査などさまざまな準備を施した上で工事を進めるのが基本です。
そのため、スピーディに除去を進めなければいけない場合は、早めに問い合わせ・調査してもらいましょう。
アスベスト除去工事の流れは、主に現地・事前調査から始まり、アスベスト除去作業と飛散防止処理、アスベスト付着物の除去を行い、清掃とアスベスト運搬で完了です。
具体的には以下の作業項目が含まれます。
そしてアスベスト除去作業は、以下のように特殊な方法を用いています。
たとえばアスベストの除去は、いきなり始めるのではなく飛散を抑えるための抑制薬剤を除去箇所に散布します。
次にアスベスト除去を行う時は、必ず密閉された空間で手作業もしくは専用の機械を使い壁や床から削り取り、専用の除去装置へ廃棄するのが特徴です。
廃棄後は圧縮機と呼ばれるアスベストの容積を小さくする機械を通し、運搬や廃棄コストなどの負担を抑えながら処理します。
アスベストの除去に関する工事は、アスベスト除去工事専門会社と解体も同時に行うアスベスト解体会社の2種類存在します。
大きな違いは、解体工事も含めた作業内容かどうかといった点です。
アスベスト除去工事のみの場合は、あくまで建物の解体や撤去はサービスの範囲外です。
アスベスト解体の場合は、まずアスベストが含まれていない箇所を解体・撤去します。
そしてアスベストが含まれる箇所は、先にアスベストの除去工事を行い除去後の柱や壁などを解体する流れです。
解体予定も含まれている場合は、アスベスト解体を選ぶのもおすすめでしょう。
アスベスト除去工事に掛かる費用は、坪単価のため除去面積によって大きく変わります。
そのため数万円で済む建物もあれば、50万円前後かかる建物もあるでしょう。
また、アスベスト除去工事は、作業員の安全性や周辺環境も考慮しながら慎重に進めなければいけないため、一定の金額がかかる点も理解しておきましょう。
費用項目は、見積書に石綿含有建材などという名称で加えられています。
アスベストは肺がんなど、人体に重大な悪影響を与える危険な素材です。
しかし、全面禁止へ法規制されたのは2012年3月1日と、2019年時点と比較して最近でしょう。
そのため多くの一戸建て住宅やビル、マンション・商用店舗などあらゆる建物に、アスベストが含まれている可能性があります。
アスベストは建物の所有者だけでなく、周辺住民にとっても重要な課題です。
まずはアスベスト除去工事会社へ連絡し、アスベストの有無に関する調査をしてもらうことが大切です。